社長の溺愛
「翼、おいで」
これはつい最近わかったことで、彼女は「おいで」が好きらしい
だから今も素直に俺の隣にきては言葉を待っている
「翼は料理したことあるか?」
見つめあったまま近くにあったトマトを見せる
彼女は小さく頷いて「主人に手料理が好きってひとがいた」とトマトを細い指で掴む
話の節々に出てくる色々な主人たち
翼は当たり前のことのように話す
まぁ、彼女にとっては主人がいて、命令されるとううことが普通だったんだが
俺はなるべく優しい笑みを浮かべて「一緒に作ろうか」とまな板を出した
彼女はしばらく無反応だったが、包丁を出すと黙って具材切りはじめた
器用に包丁を操る姿はとても愛らしくて、俺は危うく卵を焦がすとこだった