社長の溺愛
朝ごはんも食べ終えて、俺がスーツのジャケットを着たときだった
「………慎」
今にもかき消されてしまいそうな、か弱い声を出して着たばかりのジャケットの裾を掴む
こんなことは初めてで、新たな一面が見れて嬉しいと思う反面、どうしたらいいのかと悩んでしまう
とりあえず話を聞いてあげよう
「どうした、何かあったのか?」
ソファーに座る翼に合わせて俺も膝を折る
「………」
翼は何度か瞬きを繰り返すと、スーツの裾をやっと離した
「翼…?なにか言いたいことがあるんじゃないのか?」
さりげなく言葉を促してやると
「お手伝い…」
と呟いた
「………お手伝いが…どうした?」
翼は一度目を伏せると、俺の顔を覗くようにして視線を向けた
そして本日二回目となる俺を喜ばせる発言をした
「慎のお手伝いがしたい」