社長の溺愛



寝室に行くとタオルケットにくるまれてる彼女が床に座り込んでいる


「翼、会社行くんだろ?早く準備しないと置いてくぞ!」


ヒョコっと顔を出した彼女は大きな目をゆらゆらと揺らしている


「行っても…いいの?」


「ああ、一緒に行こう」





一緒に選んだ服を着てきた彼女の表情は、心なしかとても嬉しそうで、闇色の瞳には明るい光が灯ったような気がした


それから二人でマンションを出て、翼が楽しみにしていた会社に着いた



裏口から社長室に入ると、幸弘が翼見たさにドアを叩いた


翼は俺の次に話す幸弘を気に入っているようで、本当の猫さながらに無言で寄っていく


幸弘的には凄く嬉しいらしいが、見てる俺には少々苦痛だ



「翼ちゃーん♪今日はどうしたの?」


いくら女タラシだからと言っても、花のように可愛い翼には甘甘のデレデレ


24歳の男が二人そろって何をしてるんだと言われそうだか、翼には致し方ないと思う



「……慎のお手伝いなの」



まるで幸弘にも許可をとるように首を傾げる


「そっか、じゃあ一緒に洋服見ようか!」


終始にこにこのバカはドアの近くにあった段ボールを大量に持ってきた


「幸弘、それ何だ?」


俺が段ボールに視線を向けると、翼も同じように視線を向ける

「サンプルが届いたんだよ、この間の会議で出したやつ!」



そういえばそんなのがあったな…


「社長さんは資料と仲良くしてて~、俺は翼ちゃんとお仕事するんで♪」


翼をソファーに座らせた幸弘は、テーブルの上に段ボールを置いていく


翼は俺と仕事しに来たんだよ!と思いつつも、段ボールの中を一生懸命覗く姿はなんとも微笑ましい


「翼ちゃんは、この紙に気になること書いてね~」


「……幸弘くんも?」


あのシャーペンの芯の日以来、幸弘は「仲良くなれば好きなものも分かる!」とかなんとか言って第一歩として「幸弘くん」と呼ばせてる





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