社長の溺愛
その青年は可愛い仔猫に視線を奪われて固まっている
視線を直に感じたのかくるっと振り替える翼
しばらく停止したかと思うと、持っていた服をソファーに投げて俺に駆け寄ってきた
え…?
なんだなんだ…?
社長専用のチェアに座っている俺の腕に、何故かしがみつく彼女
酷く困ったような、泣きそうな顔をしている
「………イヤ…」
しゃがみこんで、机を盾にして隠れようてする
「どうした、何がイヤなんだ?」
あまりにも弱々しい姿に翼を抱き上げ、抱き締めるようにして膝の上に座らせた
翼はちらっと後ろをみると
「……男のひと…イヤ」
と俺の胸に顔を埋めた
あぁ、どうやら彼女は入ってきた秘書が嫌らしい
翼を会社に連れてきても、誰にも会わせないようにしていたからか、俺と幸弘意外に面識がない
きっと翼は『主人』としての男は受け付けなければいけなかったから、面識のない男が恐いのだろう
でも…
ここまで頑なに拒否をする姿は初めて見た
今にも泣くんじゃないかってくらいに恐がっている
頭を撫でてやりながら抱き締めるが、一向に離れようとしなくて、むしろ掴む力が強くなっている
すると、翼を見ていた青年がガバッと勢いよく頭を下げた
「すいません!俺…俺っ…」
明らかに取り乱している
「幸弘!」
「あぁ」
名前をとっさに呼ぶと「話聞いてくるな?」と言い残して、青年を外に連れ出した