社長の溺愛



バンッ…ーーー!


それは翼が眠りに落ちてしばらくしたときだった


いつも、どんなことがあっても感情を上手くコントロールするはずの幸弘が、社長室のドアを乱暴に蹴り開けた



腕の中で寝ている翼に気がつくと「悪い…」と呟いて前髪をかき上げた



「幸弘…話は後ででいいか?」

今は早く翼を連れて帰ってあげたい


幸弘は今までに聞いたこともないような低い声を出した


「あぁ、仕事は任せろ」


幸弘でさえもここまでにさせる話なら、俺は怒り狂ってしまうだろう


「夜に行く、そんときに話す」


それだけ言うと幸弘はそっと翼に触れてより一層眉間の皺を深くした


それまでに冷静さを取り戻そう



「あぁ、今日は帰る」



翼を抱き上げたまま立ち上がり、 そのまま駐車場まで突っ切った


少しでも側にいてやりたくて、運転中も手を繋いだままだった





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