社長の溺愛
ガチャガチャー…
寝ている翼を気遣ってか、ドアの開閉の音が不自然になる
足音さえも気にしてるようだ
カチャー…
「慎、翼ちゃんはそこいんの?」
寝室に入ってきたのはさっきまで話していた幸弘
そろりそろりとベッドに近づいてくる
「あぁ、ぐっすり寝てる」
幸弘も俺の近くに座ると、可愛い仔猫の寝顔を見つける
「本当だな、“ちゃんと寝れてる”…」
「………?」
幸弘の意味深な言葉に眉を寄せると、「焦んなって、今話すから」と自らにも言い聞かすように牽制した
俺たちはベッドの上から移動するわけでもなく、ただ、静かに呼吸をする翼を見つめていた
それはずいぶん長い間のことだったらしく、気づいた時には数十分が経過していた
しばらくして、幸弘はおもむろに一枚の紙を出した
「………?」
それは、たまにテレビに出る1人の政治家の写真だった
なんでこんなもの…?
「これがどうした?」
写真を受けとり、まじまじと見るが何も変わった様子などない
「ソイツだよ…」
「………?」
いきなり聞こえた声はかなり低いもので、明らかに幸弘がキレていることが分かる
だが、社長室にいた時とは違って、まだ冷静さを保っていた