社長の溺愛
ガチャ――……
中には既に人がいる
俺を見た瞬間に勢いよく頭を下げる
「すいません!俺…俺っ…」
「いいから、とりあえず座って話そう」
無言で涙を浮かべ、ゆっくりと席についたのは昨日の青年
「昨日、飯塚から話を聞いた」
「…はぃ」
「どんなことでもいい。昨日飯塚に話したことを話してくれ」
「聞いたなら……」
「君から話しが聞きたいんだ―――……
“宮下” 遼〔みやした りょう〕君…」
ぐっと下唇を噛み締める青年には、眉間に皺を作って、苦しそうな表情を見せる
その青年…
宮下遼は、あの宮下吉雄の異母兄弟
つまり父親の愛人の息子だ
「俺は君から直接聞きたい。飯塚は多少省いたからな…」
「でも…!」
「でなければ、俺は今すぐ宮下吉雄を殺してしまうかもしれない」
「っ……!」
「頼む遼君、辛いかもしれないが
翼の為だ―――……」
それまでずっと苦しそうな表情をしていたのは一変し、今にも泣き出しそうな顔になった
「翼さんの…」
「あぁ…翼の為に」
遼はしばらく押し黙ると、ポツリポツリと悲惨な出来事を言葉を紡ぎながら話し始めた――………