社長の溺愛



「……し……ん…?」


はっとしたように顔を上げた翼の濡れた瞳は、しっかりと俺の顔を捉えていて、しばらく停止した


無抵抗になり、再び抱き締めるとさっきとは違うすすり泣くような声を上げた


「慎…あの人が…あの人が…!」



「大丈夫、大丈夫だから」



「でも…でも、あの人…」」


“あの人”と何度も連呼をし、息を乱していく


このままじゃ翼が危ない


精神的にも錯乱しているのに、呼吸困難になんて陥ったら終わり―――……



………!



「おい…翼!」



急にガクンと力の抜けた翼



考えていた最悪の事態を脳裏に浮かべる



冗談じゃねぇ…



力の無い翼を抱き上げてソファーに寝かせ、左胸に耳を寄せる



ドックン…



どうやら気を失っているだけらしい



だけど翼の呼吸は再び乱れ始める


「翼!」


再び胸に耳を寄せるとなんとも不規則に、それでいて速い速度の振動が伝わってきた




「はぁ…はっ…」



ヒュウ……ーー



ヤバい



翼が










危ない………―――!




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