社長の溺愛
翼…!
ヒュウ…ヒュウー……
風の音が間近で聞こえてくる
ヒュ…ッ…
心臓が止ま―――……
俺は何故か冷静に翼の鼻を押さえ、微かな息しか漏れてない唇に自分の口を押し付けた
拒否する身体に俺の中にある息を無理矢理送り込む
幾度も幾度も送り込む
何度目かしたとき、翼の身体が息を吸い込んだ
「ゴホッ……」
一瞬だけ胸を反らすと痛そうに息を吐き出した
「はぁ…はぁ…」
翼うっすらと目を開け、自分の胸に手を当てる
「翼…、大丈夫か?!」
乱れた息を整わせると、力の無くコクンと頷く
「よかった…」
安堵のため息が出る
息苦しさから濡れた睫毛にそっと指を這わす
「………慎…」
「ん?まだ苦しいだろ……?」
ふるふると首を振り、涙声で再び俺を呼ぶ
「し…ん…慎…」
弱々しい声は更に翼の瞳を濡らしていく
まるで俺を求めるように翼の腕が俺に延びる
それを受け止めると翼を強く抱き締めた