社長の溺愛
ゆっくり秘書の顔をして入ってきたのは幸弘
「いらっしゃいましたよ、社長♪」
気持ち悪い『社長』を発し誰かが来たことを知らせる
「どんな顔してる?」
「御立腹でいらっしゃいます」
憎たらしく楽しそうにするこいつは本当に恐いな
コンコン―――……
そして再びノック音がした
「どうぞ」
俺が声を出すなり息を荒くして入ってきた
ガツガツと足を鳴らしている
大理石に傷がつくだろうが
その男、宮下吉雄は俺の座ってる近くまでくると、テレビで見るような顔と違った酷く執着する変態の顔をしている
「これはこれは、宮下吉雄様ではないですか」
俺は持っていた書類を置いて、感情皆無な棒読みを披露してあげた
幸弘は俺の隣で笑いを顔面に貼り付けてる
逆に不自然だ、口角が上がりすきだ幸弘…
「ふざけるなぁ!!!あいつを返せ!」
血相を変えた宮下はこれでもかというほど声を荒げて、顔を真っ赤にさせてる
「あいつとは?どうしたんですか、そんなにお怒りになって」
どうにも成瀬のようにはいかない
成瀬のときには演技は完璧だったんだが、こいつ相手だとどうにも棒読みしかできない
それどころか顔も無表情だろうな