社長の溺愛




「3000万か?」


嘲笑いながら値を張り上げていく宮下吉雄に苛立ちが湧いてくる


翼をモノとしか見てないことに、こんな汚いやつが翼と呼ぶことに



ふつふつと怒りが湧いてくる



今すぐこいつを警察に叩き出してやろうか




「売るわけねぇだろ腐れ下道が」


…………。




突然隣から聞こえてきた暴言


その声の主は



「お前ごときが買える女じゃねぇんだよ」



またもや暴言を吐く



隣にいたはずの暴言体…飯塚幸弘は長い脚を動かして宮下吉雄の前に立っている



いきなり豹変した幸弘に呆然するヤツ


当たり前だろう、ほんの数秒前までは物静かな男がいきなり柄の悪い男に変わったのだから


スーツのズボンに手を突っ込んで、空いてる手で前髪を掻き上げて鋭く睨んでる有能な秘書


俺は黙ってその光景を眺めていた


ガンッ



いつの間にか壁に追いやられていた宮下吉雄の横に、綺麗に磨かれた靴がある



「糞が…黙って条件のんで消えりゃいいんだよ」


「お前…!何をしてるかわかってるのか!」



あ~ぁ、幸弘に口答えしちゃったよあいつ



「口答えすんじゃねぇよ」


案の定、胸ぐらを掴まれた宮下吉雄は大理石に倒れ込んだ




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