hb-ふたりで描いた笑顔-
笑顔の理由
叔母さんの家の引き戸は建て付けが悪い。だから、力を入れないと開かない。けど、今度は力を入れすぎると、すごい勢いで開く。だから、引き戸と柱がぶつかってすごい音を立てる。
バンッ。
部屋で泣いていると、すごい音がした。
ビクンッ。
枕を抱え泣いていた僕は飛び上がった。
「こら、幸男。また、泣いてたでしょ?」
「ううん、泣いてないよ。」
首をブンブン横に振った。
「嘘言いな。この濡れてる枕は何さ?」
僕が持っていた枕を、叔母さんは取り上げた。枕にははっきりと涙で濡れたシミがある。
「うん、さっきジュース飲んでてさ・・・それ、こぼしちゃったんだよ。」
「幸男。叔母さんに内緒でジュース飲んだのかい?」
しまった。ごまかしたつもりが、かえって悪くなってしまった。僕は考えた。考えて正直に言う事にした。
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