hb-ふたりで描いた笑顔-
ぎこちない。食事を終えると、ぎこちなさは加速した。面白そうなテレビはこう言う時に限って、ニュース特番とかに取って代わられた。もはや共通の会話を提供するものは何もない。
ただ、時間だけが過ぎていく。
「もう、いやだ。」
幸男が声をあげた。
「幸男、どうしたの?」
「な、何?幸男君。」
ふたりが一斉に幸男を見る。
「なんなんだよ、これ。こんなのちっとも楽しくないよ。」
「こんなのって?」
美優が聞いた。
「僕はさ、お母さんと叔母さんと一緒にご飯が食べれたら、みんないっぱい話して、いっぱい笑ってって思ってたんだよ。なのに、ずっと黙って・・・笑いもしないで・・・。こんなのさ、全然、全然楽しくないよ・・・。」
そこから先は涙のせいで話せなくなっていた。
「幸男・・・。ねぇ、姉さんからも何か言ってあげてよ。」
美優は促した。
しかし無駄だ。美喜は俯いたまま黙っている。
<どうしたらいいの?>
幸男が言っている意味はわかる。しかし、どうしても幸男の事を息子だと感じられない。気分としてはおもちゃ屋の前で、知らない子供が駄々をこねているのを見ているのと何ら変わらないのだ。
「姉さん・・・。」
言葉は出てこない。感情も出てこない。ただ、この空間から抜け出したい、それだけだった。
「ごめんなさい。」
美喜は立ち上がり、そのまま外に行ってしまった。
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