hb-ふたりで描いた笑顔-
「似てるよぉ。」
「似てないよ!」
「似てるよぉ。」
「似てない!」
何度も、何度も、同じように繰り返した。どうやっても美喜は意見を覆そうとしない。幸男はあきらめて他の話題に切り替えた。しかし、これがいけなかった。
「ねぇ、あの雲さ・・・。」
「今度は何?」
「お父さんに似てるよね?」
美喜は空を見上げた。何と言う神のいたずらだろう。美喜にしても、幸男にしても、まったく似つかないと言ってもいい形をしていた。しかし、今、幸男が言った雲に関しては言葉を失うほど似ていた。
「えっ。」
手で口を塞いだ。哀しみが口からこぼれていかないようにと、幸男に気を遣った。
「お母さん?」
俯く美喜の顔を下から覗き込む。目が真っ赤に腫れているのがわかる。そして瞳がキラキラと輝いている。
「お母さん?」
もう一度聞いた。
「あ、うん、ごめんね。」
「お母さん、どうかしたの?」
どうして母親がそうなったのか、幸男には理解出来ない。ただ、単純に心配して聞いただけだ。
「・・・。」
美喜は答えられない。幸男の一言、一言が夫との記憶を明確にしていく。幸男に夫の面影を重ね、ますます自分を追い込んでいってしまう。涙を堪え、哀しみを殺し、ゆっくりと家路につくだけで精一杯だった。
「似てないよ!」
「似てるよぉ。」
「似てない!」
何度も、何度も、同じように繰り返した。どうやっても美喜は意見を覆そうとしない。幸男はあきらめて他の話題に切り替えた。しかし、これがいけなかった。
「ねぇ、あの雲さ・・・。」
「今度は何?」
「お父さんに似てるよね?」
美喜は空を見上げた。何と言う神のいたずらだろう。美喜にしても、幸男にしても、まったく似つかないと言ってもいい形をしていた。しかし、今、幸男が言った雲に関しては言葉を失うほど似ていた。
「えっ。」
手で口を塞いだ。哀しみが口からこぼれていかないようにと、幸男に気を遣った。
「お母さん?」
俯く美喜の顔を下から覗き込む。目が真っ赤に腫れているのがわかる。そして瞳がキラキラと輝いている。
「お母さん?」
もう一度聞いた。
「あ、うん、ごめんね。」
「お母さん、どうかしたの?」
どうして母親がそうなったのか、幸男には理解出来ない。ただ、単純に心配して聞いただけだ。
「・・・。」
美喜は答えられない。幸男の一言、一言が夫との記憶を明確にしていく。幸男に夫の面影を重ね、ますます自分を追い込んでいってしまう。涙を堪え、哀しみを殺し、ゆっくりと家路につくだけで精一杯だった。