貴方と私
「……。疲れたんだよ」
遠い目で外を見詰め、意外にもあっさりと答えてくれた。
「疲れた?」
「生きていく事もなにもかも疲れたんだよ」
あ、今悲しそうな顔した。
「奇遇ですね、私も疲れてますよ。」
「あ?」
「通いたくも無い学校に毎日通って嫌われない様に愛想振り撒いて、私も疲れてますよ」
同じ様に外を見詰めてみる。この短時間で何処から来たか分からないマスコミ。携帯で私達が居る空き教室を撮る生徒。そんな生徒を叱る教師その他諸々。
「馬鹿みたいだなぁ」
毎日重たい足を運び来てする事と言えば誰かのご機嫌取り。嫌われるのが怖くて都合の悪い事も含めて全部相手に合わせてた。
「あの」
「なんだよ」
「ここで私を殺してくれませんか」
「は?何言ってんだよ」
「これから…生きて行く自信が有りません」
「だからって、」
「だから殺して下さい」
「俺はどうすんだよ」
「…。一緒に死にますか?」
暫しの沈黙が流れた後拳銃を持ったこの人は私の目を静かに見据えた。
「後悔は、しないか?」
こくり。頷く私。
「じゃあ…」
「待って下さい」
引き金を引く手が止まった。
「後悔は、しませんか?」
こくり。頷く貴方。
「どうせ俺も死ぬからな」
「あ、そっか」
「おい。もう良いか?」
「…はい」
ぱーん。
響く銃声。
「じゃあな」
小さな貴方の声。
ぱーん。
もう一度響く銃声。
これで全部終わるんだ。そう思うと笑顔が零れる。
静かな空き教室には縛られた私と拳銃を持った貴方。二人だけ。
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