部活~ウチらバスケ部~高校編 ファイナル
………(5) 暴 力
甲陽高校、体育館。
今日も、坂井は、気合が入っていた。
しかし、今日の2年生は、
何か、おかしかった。
時々、散漫なプレーが見られるのである。
坂井は、なまじ、気合が入っているだけに、
少し、もどかしく思っていた。
そして、それが重なって、
次第に、イラついて行った。
特に、ミスを繰り返す友理に、
怒りが込み上げて来て、遂には、
ツカツカと、友理の前に行き、
「何度言ったら、わかるんだ。
この野郎」
と、怒りの形相で、手を振り上げた。
すると、友理が、
「かんにん」
そう言って、両手で頭を抱え込み、
腰から、崩れ落ちた。
あわてて、佐紀が、走って来て、
坂井と友理の間に立った。
「コーチ、やめてください」
別に坂井は、殴ろうとした訳ではなかった。
昔はよく、殴っていたが、
今は、ちょっとした暴力でも、
部の存続が、危うくなる。
それに、年をとって、
性格も、かなり丸くなってきた。
ただ、意気込みの分だけ、怒りも大きく、
ついカッとなり、手を上げてしまったのだ。
坂井は、佐紀の、凛とした態度に、
行き場を無くした、振り上げた手を下ろし、
「おっ、おお、
ちゃんと、言った通り、やれっ」
そう言って、サイドへ出て行った。