部活~ウチらバスケ部~高校編      ファイナル

坂井の中を、熱い物が、こみ上げた。

後味の悪い辞め方をして、
恨まれてるかも知れないと思っていたが、
感謝されるとは、思ってもみなかった。

むしろ、恨まれて辞める方が、
後腐れが無く、気が楽だと、思っていた。


結束を強めるために、あえて、
憎まれ役を、買って出たのだが、
坂井にとっては、皆、可愛い教え子である。

感謝されて、嬉しくない訳がない。

しかし、ここで甘い顔をすると、
せっかく、憎まれ役を買った、意味がない。

坂井にも、プライドがある。


  「もう俺は、お前たちのコーチじゃない
   そんな所に、大勢、立たれたら、
   商売の邪魔だ。

   さあ、帰った、帰った」


すると、佐紀が、

  「私たちの試合、見に来てください」


と、言った。

これ以上、皆が、ここに居られると、
本当に、泣いてしまいそうだった。


  「ああ、わかった。
   また、見せてもらうから、
   もう、帰った、帰った」


  「じゃあ、失礼します」


そう言って、佐紀達は、帰って行った。


  “何て、奴らだ。
   あいつらを見て、本当に良かった”


坂井は、心の底から、そう思った。

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