部活~ウチらバスケ部~高校編      ファイナル

佐紀の意志の強さは、祐太も知っていた。

だから、何を言ってもムダだろうという事も
知っている。

しかし“なぜ?”、なぜ?ということが、
頭の中を、駆け巡っていた。



同じように、佐紀も辛かった。

“祐太のため、今はこうする方がいい”
必死で、そう自分に、言い聞かせていた。

あまりの辛さに、体中の力が抜けて、
しまいそうだった。



角を曲がった途端、倒れそうになった。


  「おっと」


誰かが、佐紀を抱きとめた。

佐紀の目の前に、胸がある。


  「ユリ!」


  「ゴメン、聞いてもうた」


横には、梨沙もいた。

すると佐紀は、何事も無かったかのように、
スッと立って、

  「最後の大会も近いし、こんなことで、
   浮かれてちゃ、いけないからね」


そう言って、歩いて行こうとした。

梨沙が、真剣な顔で、


  「サキぃ、辛いときは、
   泣いたらいいじゃん」


  「えっ」


  「無理しないで、今日くらい、
   思いっきり、泣いたらいいじゃん」


幼稚園から一緒にいて、
佐紀の事を知り尽くしている梨沙に
そう言われると、佐紀の中で必死に
押さえつけていた悲しさが、溢れて来た。


  「リサぁ~」


佐紀は、梨沙に抱きつき、泣き始めた。

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