僕等は野良猫




暫く歩いていると


扉があった



「…誰もいないといいけどな」


「…いたらどうする?」


「お前は猫と全力で走れ」


「…比奈は?」


「俺のことは気にすんな。とりあえず、どこに向かうかだけ教えろ」



もし、


本当に誰かいたら


比奈の命は危険だ



「近くに、と言っても少し離れてるけど、三ツ葉カフェがある。そこに行く」


「わかった。そこで集合だ」


「あぁ」


「行くぞ」



比奈は勢いよく


ドアを開けた



外には、


誰もいなかった



「っはぁ」


「安全ぽいな」


「だな」



ザリッ‥


僕の耳に

微かにだけど、

そんな音がした



「‥庵」


「どうした?」


「‥後ろ、誰かいる」



僕が庵にそう告げたとき


比奈がいきなり


庵を引き寄せた



ガンッッ!!



「っ!!!」


「比奈!?」


「走れっ!!!」



金属バットを


受け止めた比奈は


庵に叫んだ



庵は僕を


しっかり抱きしめ


全力で走り出した



一度も


振り返らずに



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