アコーディオン弾きの憂鬱
なぜなら、この人がアコーディオンを弾き始めたから。
話を聞いて下さいと言おうとしたけど、見事な演奏にこころを奪われた。
「僕に名前はいらないよ。好きに呼べばいい」
いきなりそう言われてビックリしたけど、私は笑って言った。
「なら、アコーディオン弾きだからアコね」
よろしくね、アコ。そう呼ぶと、女みたいな名前だから嫌だ。どうせならディオンがいいと五月蝿かったけどアコのままにしてやった。ささやかな仕返しだ。
「ねぇアコ、本当の名前はなんて言うんです?」
「当ててみなよ桜」
そう言う声が、今までの雰囲気とは違う、アコの演奏と同じ狂気を帯びていることに私は気付かなかった。…悲しいことに。
「ゲームをしようか、桜?」
「ゲーム?」
「これから3つクイズを出すから、答えて?罰ゲームもあるよ?」
「罰ゲームって何?」
「一問でも間違えたら死んでもらう。…僕の姿を見れた人間はみんなこのゲームをしなきゃダメなんだ」
「待ってよ、よく分からない」
「一問、毎夜生まれては明け方に消えるものは?」
何…それ。答えなきゃ死ぬ…なら、絶対に答えないといけない。
毎夜生まれる…なら、太陽でも月でもない…よね。
あ、分かった
「睡魔よ!毎夜眠くなりますし」
「残念、不正解だよ桜」
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