眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
「やっぱり先生だ!」

「………八坂?」








草の上、腰を降ろした僕の隣には、あどけない笑顔を向ける少女が立っていた。








八坂美幸。


僕のクラスの生徒だ。








少し明るい髪を緩く一つに束ね、無邪気な笑顔で僕を見つめる八坂。





この寒空の下、パジャマらしい服にダッフルコート一枚という姿が、かなり身震いを誘うが。








「びっくりしたぁ、どうして先生がいるの?」



それは、僕の方の質問だ。



「どうした?八坂。外になんて出て来て」

「私?私は散歩に行こうと思って出たら、いつの間にかここに来てたの」






いつの間にか?



それで来れる距離なのか?



「そうしたら先生がいるんだもん、びっくり!」







そう言いながらも、八坂は大して驚いた様子も無く、僕の隣に腰を降ろしてきた。





素足にスニーカを履いた脚を、草の上に投げ出している。





短いパジャマの裾、覗く白く細い足首。













八坂、また痩せたな………。








ふと、思う。







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