眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
言いかけ、息を止める様に口をつぐんだ。








………危なかった。


暴露してしまう所だった。










幸いな事に、八坂は気付いていない様だ。



ごまかす為、チョコの包装を解き始めた僕の手元を見つめている。







良かった。







安堵の溜息が、心中に湧き上がる。









佐藤先生からのチョコは、柔らかそうなトリュフだった。




「いただきま〜す!」



八坂はそれを指先でつまみ、口に放り込む。



「おいしい!」







もう一ついい?と、八坂は箱に手を伸ばす。








「先生、奥さんからはチョコ貰った?」






……嫌な質問だ。


八坂に悪気は無いのだろうが。







「そんな歳じゃないよ」





笑ってごまかした。

明確な返答は避けたい。







「先生、去年、たくさんチョコ貰ってたよね?奥さんはやきもち妬かない?」

「……………ははは…」







漏れた笑いは、渇いていた。






妬かれましたよ、さんざん。




去年の言い付けを破ったばかりに。




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