眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
苦しさが、あるのだ。


切なさ、もどかしさ、辛さがあるのだろう。





それが、僕の誘導で解決できるのならば、そうしたい。









八坂は、このままではいけない。



こんな風に、散歩に抜け出せるこの状況はいけない。




今の八坂にとっては、最悪とも言える。






何とか、しなくては。











「なぁ、八坂」

「………先生は」








僕の言葉は、八坂の問い掛けに消された。



どうした?と、うつむくその顔を覗き込む僕の瞳に映ったのは、八坂の苦痛に歪む表情。







今にも………泣き出しそうな………。









「先生は…………逃げたいって思った事、ある?」






八坂は、やはり気付いていた。



自分の今の状態も、このままではいけないという事にも。







本音で応えよう。




それが、八坂の救いになるのならば。









「ああ、あるよ………逃げたいと思った事」







僕も、人間だから……。











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