眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
3
―逃げたい―
初めてそう思ったのは、六歳の時。
自分の持つ能力に、漠然とした違和感を感じていた頃だ。
僕は、周りの同年代の友人とは、違うのではないだろうかと。
実際、そうだった。
僕には見える姿は、皆には見えないのだから。
指差し、その佇む影の様なものを教える度に、遊び相手は減っていった。
でも、僕には見えている。
なぜ、皆は気付かないのだろう。
空気の様に、見えない存在だと思えるのだろうか。
見えているのに……僕には、はっきりと見えているのに。
林の入口に佇む女性の姿も、幼稚園の庭、窓に張り付く男性の姿も、事故現場、道路を見つめる老婆の姿も………。
鮮明に瞳に映っているのに。
『宗久くん、気持ち悪い』
言われ、子供心に感じた。
それらは見えていても、伝えてはいけないのだと。
見えない人と、見える人がいるのだと。
見えない人には、見えないふりをしなければいけない…そう、感じた。
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初めてそう思ったのは、六歳の時。
自分の持つ能力に、漠然とした違和感を感じていた頃だ。
僕は、周りの同年代の友人とは、違うのではないだろうかと。
実際、そうだった。
僕には見える姿は、皆には見えないのだから。
指差し、その佇む影の様なものを教える度に、遊び相手は減っていった。
でも、僕には見えている。
なぜ、皆は気付かないのだろう。
空気の様に、見えない存在だと思えるのだろうか。
見えているのに……僕には、はっきりと見えているのに。
林の入口に佇む女性の姿も、幼稚園の庭、窓に張り付く男性の姿も、事故現場、道路を見つめる老婆の姿も………。
鮮明に瞳に映っているのに。
『宗久くん、気持ち悪い』
言われ、子供心に感じた。
それらは見えていても、伝えてはいけないのだと。
見えない人と、見える人がいるのだと。
見えない人には、見えないふりをしなければいけない…そう、感じた。
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