眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
―逃げたい―






初めてそう思ったのは、六歳の時。


自分の持つ能力に、漠然とした違和感を感じていた頃だ。







僕は、周りの同年代の友人とは、違うのではないだろうかと。







実際、そうだった。


僕には見える姿は、皆には見えないのだから。









指差し、その佇む影の様なものを教える度に、遊び相手は減っていった。





でも、僕には見えている。










なぜ、皆は気付かないのだろう。


空気の様に、見えない存在だと思えるのだろうか。








見えているのに……僕には、はっきりと見えているのに。








林の入口に佇む女性の姿も、幼稚園の庭、窓に張り付く男性の姿も、事故現場、道路を見つめる老婆の姿も………。




鮮明に瞳に映っているのに。









『宗久くん、気持ち悪い』








言われ、子供心に感じた。




それらは見えていても、伝えてはいけないのだと。





見えない人と、見える人がいるのだと。





見えない人には、見えないふりをしなければいけない…そう、感じた。



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