眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
そんな僕に気付いたのは、父だった。





子供部屋の隅、無意識の防衛本能からか膝を両腕で抱え込み、何度も何度も回想される恐怖と震えに、身を委ねる事しかできなかった幼い僕に、父は手を差し延べてくれた。





「宗久、何を見た?」









駄目だ。


言ってはいけない。





父も、気味が悪いと言うかもしれない。





こんな、僕を………。











逃げたい。








自分を否定する気持ちが、涙と共に溢れ出していた。









人では無いものが見える。


だから、人に嫌われる。


気持ちが悪いと。







……こんな目等、なければいい。


こんな僕等、居なければいいのに。








普通になりたい。





自分が嫌だ。


大嫌いだ。








逃げたい……ここから逃げたい。












だが、父は違った。






全てに、気付いていたのだ。







「宗久……お前は、父さんと同じだ」








震える僕を抱き、父もまた嘆いていた。






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