眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
戸惑いながらも僕は、伝えるべきなのだと悟った。



彼の死に嘆き、悲観にもがいでいる家族に、それは伝えるべき言葉であったからだ。









(もう、泣かないで…僕は、自分の運命を受け入れたのだから……)












彼のメッセージは、家族だけではなく、僕の心さえも目覚めへと導いてくれた。






自分の運命を受け入れる。








僕は、あの時の……幼い僕への父の謝罪の意味を理解した。







―逃げたい―








それは、甘えでしか無かった事を。



自分本位の、甘えでしか無かった事を。








父も苦しんでいたのだ。


父もまた、この能力に苦しんできたからこそ、僕の苦しみも理解してくれていた。







だからこそ、理解していたからこそ…それが僕の身体にも刻まれている刻印だと知った父の……やるせない悲痛…。










このままでは、いけない。


逃げてはいけないのだ。




見えないものを否定する事は、自分を否定する行為だ。








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