眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
「八坂は、この景色を汚れてると思う?」





八坂は、首を振る。





「だろう?綺麗だと感じられるのは、自分もまた生きているからだよ。本当の美しさは、夢では見る事はできないよ。夢じゃないからこそ美しい。そこに在るから夢じゃない。夢は変わらないけれど、現実は、自分次第でいくらでも変える事ができる。変わらない現実なんて無いんだ」





だから、気付いて欲しい。

自分の在るべき姿に。



そして、逃げない勇気を得て欲しい。








見上げる、八坂の瞳。



溢れる雫の中、月の光が揺らめく。










そう、泣いてもいいんだ。

みっともなくてもいい。




悔しいなら、どうすれはいいのか分からないなら、泣く事が助けになる時もある。





葛藤や苦しさ、悲しさを軽くする為にも、涙は存在するものだから。







現実は、辛い時もある。


逃げたい時もある。





そんな自分を認める事も必要だ。





認める事で、必ず何かが見えるだろう。






気付かないふりよりも、認める事の方が勇気だから。





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