眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
今の自分には重く、困難な問題ならば、後回しにしてもいい。





捨てさえしなければ、後回しにしてもいいんだ。







成長して、力を付けて、再び向き合えばいい。





それだけの時間はある。



困難が降りかかる時間と同じく、解決する時間もある。







それが、生きていくという事なのだから。












「逃げてばかりいると、いつまでたっても変わらない。周りも、自分も。問題を解決する力が身につかないからだ。何をしていいのか分からないなら、出来る事から少しづつ始めればいい。今の自分に出来る事をね」





「私に……出来る事……」

「ああ、そうだよ」








僕も、そうして今を生きているのだ。









夢は、儚い。




いつかは覚める。





でも、現実で見る夢ならば、自分の力で得た夢ならば、覚める事は無い。










「八坂は、過去よりも未来に多くのものを持っているんだよ。名前の通りに、美しい幸せを持っているのだから…………何も、怖くはないよ」









八坂の瞳から、雫が頬を流れ落ちた。





.
< 26 / 35 >

この作品をシェア

pagetop