眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
5
帰宅した僕と妻を玄関で迎えてくれたのは、梅の花だった。
開いた戸、隙間から逃げ込んでくる様に流れてきた風をからかう様に、揺れる。
先刻、僕と妻の言い合いを楽しんで見物していたくせに、いい気なものだ。
「帰ったよ」
呟き、その細い枝を指先で弾く。
「あら、宗久さん」
居間から、母が顔を出した。
この人も、のん気なものだ。
今に始まった事ではないが。
「帰りました、母さん」
「今、あなた宛てに電話がありましたよ?病院からでしたが、何かあったのですか?」
屈み込み、僕の靴を揃えていた妻が手を止め、顔を上げた。
「病院ですって?」
不安げに僕を刺す、二人の視線。
思わず、頭を掻いた。
そんな、病院からだというだけで…そんな目をしなくても。
「誰からの電話でしたか?」
「八坂さんとおっしゃっておりましたよ?」
八坂……。
ああ、やはりな。
そうではないかと思っていた。
.
開いた戸、隙間から逃げ込んでくる様に流れてきた風をからかう様に、揺れる。
先刻、僕と妻の言い合いを楽しんで見物していたくせに、いい気なものだ。
「帰ったよ」
呟き、その細い枝を指先で弾く。
「あら、宗久さん」
居間から、母が顔を出した。
この人も、のん気なものだ。
今に始まった事ではないが。
「帰りました、母さん」
「今、あなた宛てに電話がありましたよ?病院からでしたが、何かあったのですか?」
屈み込み、僕の靴を揃えていた妻が手を止め、顔を上げた。
「病院ですって?」
不安げに僕を刺す、二人の視線。
思わず、頭を掻いた。
そんな、病院からだというだけで…そんな目をしなくても。
「誰からの電話でしたか?」
「八坂さんとおっしゃっておりましたよ?」
八坂……。
ああ、やはりな。
そうではないかと思っていた。
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