眠りの聲(こえ)―宗久シリーズ小咄2―
そう、妻の怒りの原因は、紙袋いっぱいの義理チョコである。








今日は、バレンタインだ。



高校教師の僕は、こうして毎年、女子生徒からたくさんチョコを渡される。



バレンタインというのは、女性にとってはイベントであるらしい。


まるでお祭り騒ぎだ。



女子高であるため、余計なのだろうが。







妻は、少女から貰うチョコに、何やらライバル心があるらしい。



一度、生徒からのチョコに、告白めいた手紙を発見してからだ。






そんなに怒らなくても、僕は妻以外の女性に、揺らいだ事は無いのに。








妻の瑞江は、綺麗だ。


僕より一つ年上である妻は、百合の花の様だ。


結婚して6年、未だにそう思う。






しかし妻は、少々やきもちが過ぎる時がある。


今がまさにそれだ。




大人の女性なのだから、少しは余裕を持って欲しい。






「私…あなたを疑っている訳ではありません。ですけれど………」



けど……何ですか?





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