土曜日の図書館
現れたのは自分よりも少し低い身長の男。
…男というよりは少年、と言った方が正しい容姿だ。


濃い紺の短い髪に、意志の強そうな蒼い瞳。
左側に携えた剣の柄に手をかけたその姿は、まさに『剣士』だ。


…ん?ちょっと待てよ。
こういう奴…知ってる。もちろん現実世界において、じゃなくて。


「そ…蒼刃…?」

「はぁ?なんで俺の名前知ってんだこいつ!」

「あーそうだそうだ!宝来蒼刃(ホウライソウハ)だ!」

「っ…だからなんで名前…!」

「もう早いよ蒼刃!勝手に行っちゃわないでよ。」

「えっ?星来(セイラ)…?」

「なっ…なんであたしの名前…?」

「星来ぁー待ってよー!」

「桃依(トウイ)…桃依なのか?マジで…?」

「えぇーなんでボクの名前知ってるのぉ?」

「なになに、今度は何さ?」

「白斗(ハクト)…?」

「あれ?はじめましての女の子がなんでオレの名前…?」

「お前の弟の暴走、何とかしろ。」

「それが出来たら苦労しないんだけど。」

「うわ紫紀(シキ)だ!それに緑志(リョクシ)!」

「うわ、とは何だ。うわ、とは。それに何故お前が俺の名を知っている?」

「おまけに僕の名前までね。」


…これは本格的におかしくなってきた。自分の頭がなのか世界がなのかは判断出来ないけど。
『本の中の登場人物』と会話が出来るなんて。

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