土曜日の図書館
「そんな本の所在など聞いたことがない。」

「未来のもの、ですから。」

「…そう言われては太刀打ち出来んな。」


紫紀が気まずそうに顔を歪めた。


「じゃあオレたちを知ってるのは…。」

「未来であなた方が非常に有名なのはご存知かと。」

「んー…そこも否定出来ないね。
なんせオレたち、教科書に登場しちゃってるらしいし。」

「ええ。教科書でももちろんですし、私は個人的に皆さんに興味があって調べたりもしていましたので。」

「颯くんも?」

「あーはい。俺も結構興味があって。」

「なるほど。だから詳しい、とね。」


…彼女の口から出てくる出まかせは確かに出まかせなはずなのに、嘘らしさは皆無だ。
むしろ本当に自分たちは未来から来ている、そんな錯覚までしてくる。


「蒼刃ー!なーに気難しい顔してんのよっ!」

「…ってぇな!この怪力女!力いっぱい殴るんじゃねぇよ!」

「はぁー!?っていうか蒼刃がまず喧嘩吹っ掛けたんだから謝りなさいよね!二人は全然怪しい人じゃないじゃない!」

「…身分証、ねぇのかよ。」

「すみません。どうやら移動の途中でどこかへ行ってしまったようです。」

「あっそ。じゃーもう俺たちに手出しすんな。俺らも時間ねぇし。」

「時間がない、とは…どういうことですか?」


彼女がぐいっと身を乗り出して尋ねた。
蒼刃は忌々しげに顔をしかめさせる。

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