土曜日の図書館
水竜の子どもはなんとか無事なようだ。
ただ不安げな表情は見てとれる。…そりゃそうだな、あんだけ揺れたし。


「もう大丈夫だから。」


努めて落ち着いた声で俺はそう言った。
水竜のうるうるとした瞳が少しだけ揺れ、小さく頷いた。


「竜使い、なのかな?」

「え?」

「颯くんは竜使いかなんかなの?未来で。」

「図書館で働いてるんだってよ。竜使いなんかこの世にいるのかよ?」

「さぁ?でも書物上はいるらしいよ。オレも見たことないけど。」

「俺、そんな大層なもんじゃないんで。
ホントに普通の図書館員です。」

「そうなの?それはちょっと残念。」


そう言って白斗が笑う。
…こういう掴みどころのない感じは本のままだ。


「小澤さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。大島さんは?」

「私は問題ありません。」

「でも、顔、ちょこっとだけ赤くなってる。
もしかして火傷?」


そう言って俺は彼女の右頬に触れた。
その瞬間、彼女が大きく跳ねた。
…後ずさるとかそういうレベルではなく、上に、15メートルほど。


「…え?」


間抜けな声は出たのは俺だけだったけれど、その場にいた全員が目を丸くした。

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