土曜日の図書館
「…それで?」

「え?」


蒼刃の鋭い視線にいきなり捉えられた。
…あれ?俺なんかしたっけ?


「なんで凛には能力あって、お前にはねぇんだよ。」

「え…あ…あー!確かに。
でもそんなこと俺に言われても。」


大体、この『ライブリサタリィ』に来て、大した時間も経ってない。
彼女の『能力』とやらが覚醒?したこと自体の方がすごいってことを蒼刃は全然分かっていない。


「颯くんのは能力って言うより才能かもねー。」

「え?」


軽い口調で白斗がそう言う。
…肝心の俺は一体何のことなのか分からない。


「オレたちには全く懐かなかった水竜がコレだもん。」


白斗が指差すその先…そこには…
俺のズボンの裾に頭をこすりつける水竜。
時折俺の目を見つめては、甘えたそうな顔を向けてくる。


「誰にも懐かない水竜がものの数分で懐くなんて才能以外の何?」

「…ある意味能力かもしれないな。」

「やっぱり竜使いなんじゃない?」

「そんな…そんな大層なもんじゃ…。」


そう言いながら、とりあえず俺は水竜を撫でた。
懐かれれば、やっぱり可愛い。


「あの、お訊きしたいことが。」


そう言って空気を変えたのは彼女だった。

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