土曜日の図書館
「なにかな?」


こういう時は知識量の多い白斗や紫紀が答え役に回るのは物語通りだ。
基本的には人当たりのいい白斗がその役目を担うことが多い。


「どうして私達は炎竜に襲われたんでしょうか?
それと…水竜と炎竜について少し説明していただきたいのですが…。」

「あ、そうだよね。そこ話してなかったもんね。
炎竜に襲われた理由は…まぁ想像することしか出来ないけど…
多分水竜をオレたちが誘拐した、とでも思ったんじゃないかな。」

「え…?」

「逆なのに?」

「オレたちと竜は基本的にコミュニケーションが図れないからね。
竜の知能は高いけど、それは竜同士において発揮されるもので、人語を理解するとは言われていない。…教育を施せば多少人語を理解はするかもしれないけど、竜って本当に未開拓の分野なんだよ。それこそ存在が伝説だし。」

「なぜ、誘拐だと思うのでしょうか?」


彼女の指摘はなかなかに鋭い。
…そういえば彼女は学年一の秀才だって前に何かで聞いたな…。


「竜同士は、匂いでかなり敏感にお互いの存在をキャッチするらしいよ。つまりね…。」

「炎竜のテリトリーに入ってきた水竜の匂いをキャッチした炎竜たちがヒトを攻撃対象とみなした、という話だ。」


割って入ってきたのは紫紀だ。


「上手い説明だよ、紫紀。」

「お前に褒められても仕方がない。」


紫紀の表情は仏頂面のままだ。


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