土曜日の図書館
女子高生の質問もきっとこのブースを見たからだろう。
読書の秋特集、その名も『魔法の本に出会えたら』


「魔法の本…ね…。」

「魔法の本、知ってるの?」

「え…?」


振り返るとそこに立っていたのは…
マロンブラウンの髪が優しく揺れる彼だ。


「あぁ…天宮さん。」

「こんにちは。」


中世的な顔立ちと灰色の着物が、より一層彼の美しさを際立たせている。
まさに『綺麗』、そんな言葉が彼には当てはまる。
彼はこの図書館の常連さんだ。
原稿用紙と万年筆を抱えてよく現れる。


「それで、最初の質問なんだけど…。」

「えっと…あ、魔法の本ですよね。
一応コーナーも作りましたし、基本の知識というか噂レベルなら知ってますよ。
天宮さんもご存知なのではないですか?」

「少しは、ね。でも僕は小澤さんの話を聞きたいかな。」

「え?」

「このコーナーは小澤さんの担当?」

「拙いですが…そうです、一応。」

「…興味深いね。」


そう言って彼は、俺が魔法の本について書いた部分をしげしげと眺め始めた。


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