土曜日の図書館
「泉、どこ?」

『このまままっすぐ。みどりがこい木がめじるし。』

「分かった。…桃依!」

「んー?」

「お前、目はいいか?」

「うん!」

「緑が一際濃い木のそばに泉はある。このまま真っすぐで合ってるらしい。そこに戻りたいんだって。」

「え?そうなの?」

「って水竜が喋った。」

「分かった!濃い緑…緑…。」

「ねぇあれじゃない?」


星来が指差した先には、他の木々よりも大きく、濃い深緑色の木だった。
確かに緑は濃い。
俺は水竜を抱き上げた。


「なぁ、見える?」

『うん。あの木。』

「よし。桃依。あの木で間違いない。スピード上げてくれ。」

「でも…これ以上上げても大丈夫?」

「大丈夫。こいつはちゃんと守る。
…おいで。」


俺は水竜の前で腕を広げた。
怖いならちゃんとそばにいてやる。
彼女はお前を守るために剣を振るう。
ならば俺はお前を守るために、腕を貸す。


『優しさは弱さを守ります』


彼女の言葉が蘇る。


水竜は何の躊躇いも見せずに俺の腕に飛び込んできた。
身体を小さく縮め、震えている。

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