土曜日の図書館
「好き…ですね。近付けないから尚更。」

『近付きたい、と思うか?』

「近付けるものなら。」

『では乗れ。』

「え?」

『我が背に乗せてやる、と言っている。』

「えぇ!?」


いきなり話が大きく進んでついていけない。
竜の背中に…乗る…?しかも空を飛ぶ…だって?


『お前だけではなく、お前の仲間も乗せてやってもいい。』

「あなたの背中に全員は…。」

『水竜は恩を忘れない生き物だ。
人を背に乗せるのはかつて、人と竜が心を通わせていた時に行っていた感謝の表し方だ。』

「人と竜は昔…一緒に生きていたんですか?」

『もう何千年も前の話だ。』


その目が少しだけ切なさを帯びていて、まるで人間を見ているような気持ちになる。
竜も人もそう変わらない。
不思議な感覚が俺を包む。


『さぁ、我が背に乗れ。
本物の空を見せてやろう。』

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