土曜日の図書館
ふわりと、今まで経験したことのない浮遊感に包まれて上昇する。
あの子どもの水竜がどんどん見えなくなっていく。


風が優しい。
水竜の周りだけは風の動きが違うらしい。
丸く優しく包むように風が動く。


地面から離れ、どんどん空が近付く。
全てが青に染まる…初めての感覚。


『風を感じるだろう?』

「…初めての感覚ですよ。」

『彼女はどうだ?』

「大島さん。」

「なん…ですか…?」

「飛んだ感想を知りたいってさ。」

「…空になってるような…気がします。」

『とても良い感想だ。』


水竜は目を細め、柔らかい口調でそう言った。


風が頬を通り抜ける。
青が近付く。青に近付く。


「…綺麗。」

「本当に。」


彼女の言葉に俺の言葉を重ねる。


見えた風景は雲一つない青空。
どこまでも広がる、果てしない青だった。


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