土曜日の図書館
「俺、今日7時で勤務終わりだからさ、その後少し話さない?」

「え?」

「あ…これナンパっぽく聞こえる?まぁナンパっちゃナンパなんだけど…。
俺たちの身に何が起こったか整理したいし…それと…。」

「?」

「『アクアマリンの秘密』の話もしたいんだ。
あの本の読者と色々語りたいって思ってたし、凜…なら熱く語れそうだし。」


…って違うだろ。そうじゃない。そんなの建前だ。


「…頭の整理は私もしたいです。大切な思い出として残したいですから。」

「ってそれも…なんだけどさ…それだけじゃないんだよね。」

「…小澤さん?」

「俺たちの旅の話も本の話もしたい。
だけど何よりも…。」


だけど何よりも聞きたいのは…


「凜のこと、知りたい。」

「え?」

「あと、俺のことも知ってもらいたい。」

「あの…それはどういう…?」

「とにかくたくさん話したいんだ。」


凜は全然分かってないみたいだからもっと分かりやすい言葉で言うと…


「一緒にいたいんだ。今は君と。」


何かが始まる、そんな予感。
いや…もう始まってるような気がするから。

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