土曜日の図書館
「土曜日の図書館に現れる蔵書じゃない本。
いつ現れるか、本当にあるのか分からない、まるで都市伝説みたいな噂でしかないけれど。」

「それでも僕はあると思ってます。」

「そうなの?」

「まだ出会ってないだけなんじゃないかなって。」

「面白い考えだね。
…ところで、もし魔法の本があるとして、本はどこに繋がっていると思う?」

「と言いますと?」

「繋がったあとの世界を、君はどうイメージする?」

「繋がったあと…。」


噂は知っていたし興味もないことはないけれど、俺は基本的に何かが大きく変わったりすることを好まない。
環境の著しい変化だったり、何か新しいことにチャレンジしたりとか、そういうことが苦手だ。
だから本として割り切って読むという意味で読書は好きだが、その世界に飛び込みたいだとかそういう願望はない。
だから想像力は比較的乏しく、ありきたりな考えしか浮かんでこない。


「…好きなところに繋がってるんじゃないでしょうか?」

「好きなところ?」

「はい。本に触れた人が好きな場所に。
…って安易すぎますかね?」

「いや、そんなことはないよ。
じゃあ、好きな場所に繋がっているとしたら、君はどこに行きつくの?」


これは困った質問だ。
俺が好きな場所…?
もし魔法の本に出会って、魔法の本が好きな場所に導いてくれるとしたら…。

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