土曜日の図書館

彼女の場合

* * * * * 


魔法の本に触れ、『あの世界』で彼らに出会い旅をしてからもう2週間。
今はもう11月の下旬。
冷たい風がやけに身に凍みる。
来月にはクリスマスがある。
一人身がやたらに痛く感じられるのは風のせいだけじゃないと思う。


「はぁ…。」


ただ自然にため息が出る。
近付きたい『彼女』には全然近付けない。


「仕事中にため息ですか、小澤さん?」

「うわ!山内さん!」

「うわってなんですか?しかも図書館でそんな大きな声出しちゃっていいんですかー?」


ちょっと生意気そうに笑って彼女はそう言った。
―――彼女、山内かえでさんは『彼女』と同じ女子高生の利用者だ。


「…驚かさないでくださいよ。」

「別に普通に来ただけなんですけど。」

「そうですか。
…で、今日はどんな本をお探しなんですか?」

「え?」

「だって、山内さんが僕に声を掛ける時は大体探し物でしょう?
自分で端末使って調べるの、めんどくさがってやらないじゃないですか。」

「人をものぐさみたいに言わないでもらえますか?」

「実際結構ものぐさですよね、山内さん。」

「…言ってくれるじゃないですか、小澤さん。」


…って違う違う。
利用者とモメてどうする俺!

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