土曜日の図書館
「もしかして山内さん、天宮さんのこと気になってるの?」


直球勝負。


「はっ!?ちょ…違いますから!全然違います!気になってませんから!」


その反応はまさにホームラン。
気になってるって全身で言ってる。


「もう、小澤さんなんか苦労しちゃえばいい!
『彼女の場合』、絶対すっごく難しいんだから!」


そんな捨て台詞を吐いて、山内さんはいつもの場所に移動してしまった。
その背を追いかけても怒られてしまいそうで、俺は作業に戻る。


「…可愛いなぁ、山内さん。」


そう呟いた時だった。


「仲、いいんですね。」

「うわぁ!」


背後にいたのは紛れもなく『彼女』。


「今日遅かったね。何かあった?」

「いえ、いつも通りここに来たんですが、小澤さんはお取り込み中でしたので声を掛けそびれただけです。
…失礼します。」


彼女はぺこっと頭を下げて俺に背を向けた。
…ん?なんかこれ、誤解っぽいもの…されてる感じ?


「あ、待って。」


俺は彼女の華奢な腕を掴んだ。


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