土曜日の図書館
「あの、ここからは僕の完全な興味なんですけど…。」

「うん。」

「天宮さんって過去にどんな恋愛してきました?」


浮かべていた笑顔がほんのりと消え、少し冷めた目で遠くを見つめたまま彼は口を開く。


「…忘れたなぁ…。もう覚えてないよ。」

「そう…ですか…。」

「小澤さんはどんな恋愛を?」

「僕は…フラれてばかりですよ。」

「そうは見えないけど。見た目はとてもモテそうだし。」

「天宮さんの言う通り、本当に見た目だけなんですよね、俺。」


いつの間にか『僕』が『俺』に変わっていた。自然と。


「見た目で勝手にイメージ作ってきた女の子が告白してきて、それで付き合ってみるとイメージと違うって言われてフラれる。
そんな恋愛ばっかりです。」

「どんなイメージ持たれていたの?」

「正義感が強くて、どんなことからも守ってくれる男らしい人、だそうです。」

「あ、違うんだ?」

「正義感のようなものは多少なりともありますけど、喧嘩は嫌いです。
女の人って好きじゃないですか…なんて言うか、身を挺して守ってくれる、みたいな男。」

「そうだね。そういう傾向は強いかもしれないなぁ。」

「でも俺、そういう場に立ち合っても動かないというか。
あと見た目的に読書好きだったりそういう風には見えないらしくて、本読んでたりするだけで幻滅されたり。」

「僕が言うのもなんだけれど、小澤さんの恋愛遍歴はなかなかのものだね。」

「…ロクな恋愛してません。」


恋愛と呼べるものかどうかも分からない。
過去のものは。

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