土曜日の図書館
「ロクな恋愛してないからだと思いますけど、恋とかよく分からなくて。」

「今はちゃんと恋、してるんじゃない?」

「え?」

「強い瞳のあの女の子に。」


…参ったというのが正直なところだった。
完全にバレている。山内さんにも彼にも。


「天宮さん。」

「なにかな?」

「恋って何なんでしょうか?」

「小澤さんにとっては何?」

「…俺にとってはほっこりするもの、ですかね。」

「ほっこり?」

「想うだけで温かくなる、みたいな感じです。」

「彼女を想うと温かくなるんだ、小澤さん。」

「…繰り返さないでくださいよ。恥ずかしいです。」

「温かい恋…かぁ…。」

「そういう天宮さんにとって恋ってなんですか?」

「名残雪…かな。」

「名残雪?」


意味が分からなかった。
恋って温かいものだと思っていたから。
どこからそんなに冷たいものがやってきたのか、見当もつかない。


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