土曜日の図書館
* * * * *


「なかなか興味深いよ、小澤さん。」


この僕を純粋だと、綺麗だと言った様はいつか涙を流したかえでに良く似ている。
…だからこそ余計、今日は彼女を思い出す。


「君を想えば想うほどに恋となる…か。」


だったら僕とかえでの間にあったものは何だったのだろう。
『想い』は確かに存在していた。
でもそれは…恋や愛と呼ばれるものとは少し違ったのかもしれない。
だから彼女はそれに気付いて、涙した。僕のために。


彼女はきっと僕と過ごした時間を思い出に変えるために離れたのだろう。
これ以上近付いてもどうしようもないと悟ったのかもしれない。
ならば…それでいい。僕は君を幸せになどしてやれない。


せめて願おう、ただ君の幸せを。
君が僕ではない誰かの隣で笑っていられることを。
そして僕もまた、君との時間を思い出に。


不意に目に入る小澤さんと小澤さんのお姫様。
凜とした表情が綺麗で、その瞳に宿す力は強く逞しい女の子。
お姫様と呼ぶには少し容姿が物足りないかもしれないけれど、彼の目には充分お姫様に映っていることだろう。


あの子と楽しげに話す小澤さんがやけに優しく見える。
あの子も時折小さく微笑んでいる。


そんな二人の姿が微笑ましくて、僕は少しだけ笑みを零した。
思わず言葉まで零れたのはもう仕方のないことだった。


「もしかしたら僕が欲しいのは、…“ああいうモノ”だったのかもしれないな。」


*fin*

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