土曜日の図書館
「あの、小澤さん。」

「んー?」

「そのポケットに入っているのはチョコレートですか?」


やけに淡々と言う彼女の声に血の気が引いたのは言うまでもない。
本を一冊落としそうになって、ギリギリのところでキャッチする。


「図星ですね。」

「あ…まぁ。」

「それで、今日はいくつ貰ったんですか?」

「え…っと…12?」

「それはそれは。」

「ちょっと待って。なんか…怒ってる?」

「怒ってません。」

「怒ってるよねその口調。」

「怒ってませんって言ってるでしょう。」

「…分かった。怒ってない。ていうか今日、何の日か知ってるの?」

「知りません。」

「いやいや待って。知らなきゃチョコに気付かないよね?」

「…そんなに可愛いラッピングでしたらきっと中身もきっと美味しいのだと思います。」

「そうかもしれないけど…俺は食わないよ?」

「え?」


彼女がパッと顔を上げた。
…もしかしてさ、今の…。


「ねぇ、凜。」

「なんですか?」

「ヤキモチとかだったりする?今の。」


彼女の頬がさっと赤く染まる。耳までほんのりと赤い。

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