土曜日の図書館
「凜が…最初に俺をどう思ってたのか知らないけどさ、ああいう特殊な状況で守ってくれない俺に幻滅しなかった女の子は凜が初めてだよ。
それに、凜が言ってくれた言葉は本当に衝撃的だった。もちろんいい意味で。」

「私の…言葉?」

「優しさは弱さを守る、それに戦えることだけが強さじゃない。
確かに君はそう言った。それがどれだけストレートに響いたか、想像出来ないでしょ?」

「…本心ですが。」

「うん。本心だって分かってた。だからあんなに響いたんだと思う。
それに…嬉しかったから。」

「え?」

「俺を真っすぐ見てそう言ってくれたんだって、そんな気がしたから。
それにさ、よく見るようになると色々気付くんだなって。」

「何にですか?」

「照れた顔も心配してる顔も、笑顔も色々。
表情が変わって、色んな顔見れるのが嬉しくて。
こういうのなんだって思った。
凜が笑うと嬉しくなる感じ。こう…ほっこりするっていうさ。
温かい気持ちになるんだよ、凜がそこにいるだけで。」

「…。」


彼女はどう返していいか分からないようだった。
…それじゃ助け舟を出そう。


「もう一度言うけど、俺は凜が好きだよ。
だから、もし良ければ凜の気持ちを聞きたい。」

「私の気持ち…。」


彼女は腕の中でぴくりとも動かず、口も閉じた。
…考えてるんだろう、慎重に。言葉を選びながら。

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