土曜日の図書館
「おやすみ…なさい…。」


彼女が小さく呟く声をが聞こえた。
思わず笑みが零れる。
俺は彼女の方へと振り返る。


「また、図書館でね。」

「…はい。」


消えそうなほどに小さい彼女の声に、恥ずかしさが混ざっててそれがまた死ぬほど可愛い。
…もはやビョーキだ、俺。そんなこと知ってる。


家まで帰る道のりがこんなに楽しかったのは生まれて初めてかもしれない。
そのくらい浮かれた気持ちで、ニヤニヤが止まらない。


フラッシュバックしていく彼女の真っ赤な顔、怒った顔…。
その一つ一つが異常なくらい鮮明で、さらににやける。


「…明日質問攻めだよなぁ…。」


でもまぁいいかと思えるくらいに今は幸せだ。


彼女との距離がゼロになったわけじゃない。
だって正式な返事を貰ったわけでもない気がするし。
少なくとも『好きだ』とは言われてない。


だけど…


「…一瞬、距離ゼロになったしな。」


ていうかしたんだけどな。
心の中で言い換えて、俺は車を走らせた。


*fin*

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