SEASON -君の季節、私の季節-
6月の中頃。


入学式に咲いていた桜はとっくに散って、新緑の葉が柔らかな風に揺れる。





友達作りにとことん失敗した私は、相変わらず自分の席について前を見ているだけだった。


ここまで来るともうグループなんかとっくに出来上がっていて、私ももうすでに友達作りは諦めていた。





本を読む振りをして、耳をすます。

さらさらした夏くんの声が、私の少し後ろで聞こえる。




明るくて、ちょっぴりやんちゃな友達の多い夏くんは、私と正反対だった。


そんな夏くんに、私はいつの間にか魅せられていた。






憧れだった。


だから夏くんと普通に話している女の子達が羨ましかった。




私もあんな風に明るかったらなあ……。









「―――鈴原さん」



私の頭のすぐ上で、低い声がした。


見上げると、そこにいたのは矢野くんだった。





矢野くんは夏くんと仲のいい友達で、いわゆるイケメンだった。

頭もすごくいい矢野くんは、友達がほとんどいない私でも知ってるくらいとてもよくモテた。






「今から時間ある?
 美化委員の掃除当番らしいんだけど」



私は矢野くんと同じ美化委員だった。


だから何故か、地味な私が一番よく話すクラスの男の子は矢野くんだった。




「あ、うん、大丈夫」


「よかった。じゃあ行こう」



矢野くんは小さく笑った。

私にはもったいないくらいに綺麗な笑顔だった。
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